私って悪女…

8月31日

あれ以来、順は私に脅しをかけては来なかった。
逆に不安。
今日は休みで信司の誕生日。
「円、用意出来たか?」
「うん、大丈夫」
ドアを開けると、順が出てくる所だった。手にはボストンバッグ。
ふと、目が合う。
「…」
順は無言で行ってしまった。
「行きましょ」
「そうだな…」
タクシーに乗り、空港へ向かう。話では北海道に行くらしい。

到着!
着いたのは大地が広がる所にコテージが並ぶ一帯。
「ここまで来たら、順も追ってこないでしょ」
「ならいいが…」
昼食をとる為、キッチンで料理をしていると、誰か来た。
「はーい」
ドアを開けると…
順!!
「どうしてここが…」
「つけてきた」
「信司!順が!!」
奥にいる信司が顔を出す。
「何でここに…」
「俺と円は赤い糸で結ばれてる。信司邪魔しないでくれる?」
「邪魔なのはお前だろ!目を覚ませ!!」
「俺も、今日ここに泊まるから」
「はあ?何いって…」
「いいよ、泊まっても」
私は順を受け入れる。このまま言い合っても解決しない。
「円…」
「信司、いいでしょ?」
「円…本気か?」
「うん、順どうぞ」
中に入ってもらう。
奥に部屋がもう1つ空いてたので、そこを使ってもらう。
「円、どういうつもりだよ」
「信司、私達別れよ」
「はぁ?何言い出すんだ?」
「信司と順、二人を選び直すの。そうでもしなければ、順はこのまま私達に付きまとうでしょ?一回ゼロにしたいの」
「俺の事、愛してないのか?」
「愛してるからそうするの!」
順が戻って来た。
「順、私達一回別れるわ」
「じゃあ、俺にもチャンスがあるって事?」
「そっ、そうね…」
順は満面の笑みを見せる。
逆に信司の表情は曇っていた。
「やった〜」
無邪気に振る舞う順。
「円、本当に…」
「うん、一度別れましょう」
「わかった…」

中断していた昼食を順と一緒に作る。
「順、料理上手ね〜」
「俺、料理するの好きなんだ」
「そうなの、信司は作れる?」
「簡単なものなら…」
二人で過ごすはずのバースデーが三人になった。
不思議な三角関係。
私が選んだ道はそう簡単にはいかないみたい。
夜になり、信司にプレゼントを渡しに部屋へ行く。
「信司、お待たせ」
「待ってたよ」
「はい、どうぞ」
小さな箱を渡す。
「ありがとう、何かな?」
箱を開けると、クロム・ハーツの指輪が入っていた。
「サイズわからなかったから、合わないかもしれないけど…」
「大丈夫、人指し指に入る。大切にするよ」
「うん、じゃあ行くね」
「待って!」
チュッ
「もっとしたいけど、今日は我慢する」
「うん、ごめんね」
部屋に戻ると順が来た。
「どうしたの?」
「なんか眠れなくて…」
「じゃあ、話しでもしようか」

ソファーに向かい座る。
「俺、円に会って本当に幸せなんだ。街で見かけた時に一目惚れして…」
「その時に入れ替わっちゃったんだよね?」
「うん、でも、元に戻れてよかった。こうやって向き合う事が出来たし」
私はコーヒーを飲む。
順にはアイスコーヒーを入れた。
「原因は何だったんだろ?そして、どうして戻れたのか…」
「今となっては謎だね」
フゥー
時間は夜9時、寝るにはまだ早いか。
それに、順はまだ眠たくないようだし。
「順は何でアイドルになったの?」
「俺は歌を歌いたかったから」
「歌上手いもんね」
「円に言ってもらうとうれしいな」
素直な所はいいんだけど、あの豹変の仕方は何だったんだろう?
あーこのままだとテッペン回りそう。
「円?」
「あっ、はい!」
「眠たくなった?」
「ううん、ちょっと考え事」
「そう…」
順のグラスがカラになっていた。
「もう一杯作ろうか?」
「うん、お願い」
冷蔵庫からコーヒーとガムシロップを取り出す。
「はい、どうぞ」
「ありがと、そろそろ0時だね」
「本当だ!」
「円、ハッピーバースディ」
順はポケットから箱を取り出す。
「わぁー、ありがとう」
中身は金のブレスレット。【LOVE】と彫ってある。
「気に入った?」
「うん、つけるね」
手首にはめる。
「うわぁーキレー」
チュッ
「んっ」
「初めてのキス。やっと出来た」
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