私って悪女…

4月1日

私は今、目の前の海に感動していた。
肌寒いけど、テラスで物思いにふけっていた。
「風邪ひくよ」
「信司さん…」
促され、部屋に入る。
「円さん、何してたの?」
「海を眺めていた、順は?」
「俺は円さんを待ってた」
「えっ?何か約束してたっけ?」
「いや、特には…」
肩にフアッとブランケットがかかった。
「円さん、風邪引くからあっち行こう」
「順、またあとで」
信司に手をひかれ部屋に入る。
「座って」
ベットに座る。
「テラスで何してたの?」
「ん?考え事」
「どんな?」
「秘密」
口の前に人差し指を立てる。
「気になるな〜じゃあ俺の事どう思ってる?」
「難しい質問ね〜好きか嫌いかと言えば好きよ」
「そっか、好きでいてくれて、ありがと」
私はプッと吹き出す。
「アハハ、信司さんって面白いね」
「そうか??」
「うん!」
コンコン
「はい?」
ガチャ
「円さん、ここにいたのか」
「順、何かあった?」
「ちょっと…」
連れられ順の部屋に入る。
順は後ろ手で部屋に鍵をかけた。
「どうしたの?」
「円、愛してる。初めて会った時から」
後ろから抱き締められる。
「…」
「俺の事どう思ってる?」
難しい問いにどう言えばいいんだろうか…
「友人だと思ってる」
「友人…」
「こんな言い方しか出来なくてごめんなさい」
「いやっ、変なこと聞いちゃてごめん…」


夜になり、私は広間でタケと一緒にテレビを見ていた。
「あっ!俺の好きなクイズ番組だ、見ていい?」
「いいよ」
タケは無邪気でいい、心が安らぐ。
「ま〜どか」
信司が現れた。
「どうしたの?」
「夜の海を満喫しない?」
「海!行く行く」
「じゃあ上着着てきて」
部屋に戻りトレンチコートを着てきた。
「タケ行ってくるな」
「あいよ」
月の明かりを頼りに浜辺を歩く。
「円、手繋いで」
「うん」
信司の熱が手から伝わる。
「この半月、いろんな事があったな。入れ替わり」
「そうだね」
「どんなことがあっても乗り越えような」
フアッと抱き締められた。
「ありがと信司」
「どう致しまして」
「それにしても、夜の海もいいわね」
「そうだな、静かだからかな?」
「そうね」
「そろそろ戻ろうか」
「うん」

「お帰り〜」
タケが私たちを見る。
「ただいまタケ」
部屋に入りトレンチコートをしまう。
コンコン
「はい」
「順だけど…」
ガチャ
「どうしたの?」
「みんなが飲み会しょうって…こないか?」
「行く」
広間では、もう飲み会が始まっていた。
「円、こっち」
信司が隣に呼ぶ。反対側に順が座る。
「何飲む?」
「チューハイ」
「はい」
プルタブを開け、グイと飲む。
「おいし〜い」
「そりゃ良かった」
信司と順はビールを飲んでいる。
「ビール美味しい?」
「うまいよ、でも円にはまだ早いかな?」
なんかムッときた。
「ビールくらい飲めるわよ」
「じゃあ、はい」
自分のビールを差し出す信司。
グビッ
「にが〜い」
「だろ、だからいったのに」
ケラケラ笑う。
ビールを返しチューハイで喉を潤す。
「よく飲めるわね」
「なれだよ、なれ」
私は一生なれないと思う。
順は静かに私たちを見ていた。
「順、ビール美味しい?」
「ん?うまいよ」
缶を空にした。
「よく飲めるな〜」
「円もその内飲める日が来るよ」

一時間後
私は先に引き上げ、部屋に入った。
結構飲んだせいか、体がぽかぽかしている。
ベットに横になるが中々寝つけない。
コンコン
「はい」
ベットから起き上がりドアを開ける。
「タケどうしたの?」
「俺も抜けてきた。ちょっといい?」
「どうぞ」
中に入りタケは椅子に座る。
「円ちゃん、突然だけど…」
「何?」
「信司と順、どっちを選ぶの?」
「えっ…」
タケの鋭い質問。
「俺としては信司がオススメだな〜、あんな信司見たことないもん」
「そうなの?」
「円ちゃんを見る目が穏やかだよ」
「順は?」
「順は…初めから円ちゃんを愛してるのが見えてた。いとおしそうに見てるよ」
「そうなんだ…」
「多分、担当信司に変わるよ」
「どうして?」
「信司が石塚さんに電話してるの聞いた」
そこまで手を回しているの?
「俺、そろそろ行くわ」
「タケありがと」
「たいした情報じゃないけどね」
タケは出ていった。
なんだかますます寝れなくなった。
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