Black Doll

レジの店員が新人らしく
おどおどしていて仕事に手間取っている

足は小刻みにコツコツ音をたて、
腕を組み、あからさまにイライラしている表情をしているスキンヘッドの
怖いおじさんがが余計に新人店員の
精神へダメージを与えているのだろう。


そのおじさんの後ろに冷がいるのだが
冷もすこし距離をとっていた





『新人なんだから暖かく見守ってやれよ』




と、声に出しては絶対に言わないが
心の声でそう発言する


時間潰しに携帯を見ようとポケットから
取り出した。


『うわっ画面に新しいキズが入ってる...』


どこでぶつけたのかわからないが
気を落としながら携帯の画面のキズを見る

色んな角度から反射させて他にも
キズが増えてないか確認していると
ふと冷の後ろに並んでる人が画面に移った


その瞬間この世界で冷だけが時間が止まったように
携帯を自分の目線と同じ位置で
傾けている状態でぴくりとも動かない



『あ、朝の女の子が降臨していたぁあぁあーっ!!』

これももちろん心の声でだが
冷は思わず叫んでいた


1日に2回も見れるなんて
今日はなんていい日なんだ

もし店員が手間取っていなかったら
すぐに会計を済ませていただろう

後ろにその女の子が並ぶ時間も生まれなかっただろう

『ありがとう、新人店員さん』


ボソッとつぶやいて
感謝と敬意を込めてこの貴重な時間の中
新人店員に目を向ける


すると手間取っていた所が終わったのか
スキンヘッドのおじさんは
お釣りを受け取っている所だった


『前言撤回だわ』

正確には冷が女の子に気付いてから
それなりに時間が過ぎてはいたのだが
冷の時間が止まっていたため
貴重な時間が冷自身のせいで
早く過ぎていただけなのだ。


だが冷は気付いた瞬間から
新人店員がテキパキ仕事をし始めたんだと
無理矢理な感情を押し付けていた


スキンヘッドの強面のおじさんが
コンビニから出るときに
またブラドルのBGMが鳴ったのだが
あまりにも似合わなかった



『あの、お客様?どうぞ』


前に並んでる人がいないのに
冷が進まないから新人店員が声をかけた



『あ、あ、すいません!ボーッとしてて』

と、感情をぶつけるのに急がしかった冷は
お菓子をレジに置いた


『あと、ブラドルのくじ1回やります』


後がすごく気になりながら
くじ引きにワクワクしていて
いまだに忙しい精神状態だった


ちらちら後ろの女の子を見ると
ブラドルのくじ引き景品を
眺めているように見えた


『あの子もブラドルしてるのかな』

そう思いながらガサガサと
くじ箱の中で1等の券を求めて手に力を込める


だが、どれが1等なのかわかる訳がないので
結局力を緩めて適当に引いた


引いたくじの端を引っ張り
バナナの皮のようにめくる


『っ!?1等じゃん!』




手が少し震えた



見間違いではないことを何度も確認した


『おめでとうございます!1等のブラドル人気キャラNo.1のリリカ様フィギュアでございます!』


さっきまでのおどおどなど欠片もなく
満面の笑みで冷に拍手を送る


『いやー、まさか1等が当たるなんてねぇ』

と、高ぶる気持ちの中、リリカ様フィギュアを眺める


店員がフィギュアの箱に手を伸ばし
いよいよ自分の手元に運ばれようとしている時に後ろから声がした。
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