Black Doll
思わずチラ見ではなく後ろを振り向いてしまった
その女の子と目が初めて合ってしまった
ぱっつんの前髪にサラサラな茶色の長い髪
口元にあるほくろがまたかわいらしさを
後押ししている
化粧は薄目だが逆に濃くするのは勿体無いぐらい綺麗な顔立ちをしている
身長は低いが細くスタイルもいい
やはりストライクゾーンである事の再確認と
自分には手が届かない人だと実感した
『えっ?』
っとしか言えなかった
記念すべき第一声だったのだが
頭が回らずにそれしか言えなかった
激しく心臓が動いている
『あ、ごめんなさい!なんでもないです!』
冷と同じようにその女の子も精神が忙しい状態なのだろう
思わず声が出てしまったのだろう
顔を真っ赤にして下を向いてうつむいていた
初めてその子の顔をこんな近くで
まじまじと見たのだが
それでもその子が残念そうな顔をしてい事ぐらいは冷でもわかった
さっきやっぱりくじ引きの景品を見てたんだ
って事はこの子もブラドルしてるんだ
レジにフィギュアの箱が置かれて
お菓子と一所に袋に包まれる
会計を済ましコンビニを出た
だが冷の足はコンビニの前で止まっていた
そうあの女の子を待っているのだ
もちらんリリカ様フィギュアは
冷にとっても貴重な物に違いはない
ブラドルの人気キャラ決定戦の時に
リリカ様の投票を集めるために
クラス中の人にお願いした程なのだから
だがもはやそんなことは関係ない
大好きなリリカ様とあの女の子では
比べようがなかった
このリリカ様フィギュアをあの子にあげれば
たとえ一瞬でも喋れるし
恐らく冷にたいして感謝の気持ちも生まれるだろう
毎朝このコンビニでこの事がきっかけで
挨拶ぐらいはする仲になれるかもしれない
そう思うと正直リリカ様を手放すぐらい
朝飯前だった
前の道路がすごい渋滞しているのを眺めたり
空を飛んでいる鳥を眺めたりして時間を潰した
とりあえず精神状態を落ち着かせる事に
集中しながら。
自動ドアが開く音がした
目を向けるとあの女の子だった
深呼吸をしてから落ち着いた表情で
話しかけた。
『あのーすいません』
女の子はちょっとびっくりしたのか
軽くビクッとして振りかえる
『あ、急に声をかけてごめんなさい!
よかったらリリカ様フィギュアあげますよ?』
言ってやった
おどおどせずに噛まずにちゃんと話せた
精神状態を落ち着かせる事に成功していた
『あっえっ!?いいんですか!?
あっでも折角当たったのに悪いですよ』
相手に気をつかう
これは当たり前の事だが
この当たり前の事ができない人が最近多く感じられる
『いえいえ!いいんですよ。家に置くとこないですし、1等を当てれた事に満足してるので!』
言ってやった
まだ精神状態はいたって良好だった
『あーそうなんですか!でも、私は嬉しいですけど、ほんとのほんとにいいんですか?』
あーなんて謙虚でいい子なんだ
俺はその笑顔を見れただけでお釣りがくるよ
冷はお菓子だけを抜き取り
フィギュアの入ったレジ袋を掴みその子に向かって手を伸ばした
『はい、ほんとのほんとにいいんですよ。
全然気を使わなくても大丈夫です』
自然な笑顔でその子を見つめる
もしかしたら冷は実戦には強いのかもしれない
慌てる言は多々あったが失敗したことは
数えきれるほどしかなかった気がする
『ありがとうございます。ほんとに嬉しいです。あっお菓子の袋がなくなっちゃうので私の袋を使って下さい。』
そう言うと女の子は自分の買った物を取り出し
袋を冷に渡した
冷から受け取ったフィギュア袋を開けて
自分の買った物を入れる
フィギュアが入るように少し大きめの袋だったが
パンパンになった袋を眺めて嬉しそうな顔をしている
冷ももらった袋にお菓子を入れた