君に沈没。




浅い呼吸音。

繰り返される深呼吸。

呑みこまれてかき消されたのは、嗚咽。



「なっちゃん、わたし、振られちゃったぁ。先輩、ごめんねって」



……そうじゃないかと、思っていた。

だけど、直接そんなことは聞きたくなかった。



ミオが付き合っていたのはひとつ上の先輩。

夏の似合う爽やかな男だった。



俺はあいつが嫌いだった。

ミオと付き合えるやつは、恋愛対象に入るやつは、みんな。



甘ったれたミオ。

擦り寄るように手を伸ばして、いつでも笑うミオ。



なのに俺といるのが落ち着くと言いながら、俺だけは選ばない。

告白する時も、された時も、なにもないくせに別れの時だけ俺のところへ来る。



許されたものはあまりにも、虚しい。






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