恋妃
わざとゆっくり湯浴みをし、出迎えの儀式にも顔を出すこともせずに。
当の昔に祝賀会は始まっているのにもかかわらず。俺は相当遅れて、顔を出した。すると、部屋中から安堵の溜息が漏れる。
黒騎王の機嫌は、どうやら最悪だったらしい
「おお、華聖姫。相変わらず。…いや、ますます美しくなったな」
玉座に座ったままだった黒騎王は、俺の姿を見つけると玉座から駆け下り、俺の手をとった。
「…国王陛下におかれましてはこの度の祝儀、誠に慶賀に存じ上げ、また心よりの
お祝いを申し上げます」
俺は頭をさげ、経を読むように心にも無い祝いの言葉を呟く。
「そんな堅苦しい話はよい。それより顔をよく見せておくれ」
睨み付けるように、顔を上げてやる。
「ますます。美しくなったな…」
目尻をいやらしく下げて。俺を見つめる。
正妃気取りの玉蘭公主が、玉座の上からすごい視線で俺を睨んでいる。
「今年で華聖姫、幾つになられた?」
「十八でございます」
「そうか、姫がこの国来て早5年。なのに未だ、評議会から結婚の許可がおりぬとは」
 一生、許可なんぞ、おりてほしくなど、ない。
おそらく、俺と同じ事を思っているであろう、玉座にはべっている玉蘭公主が、視線で
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