恋妃
俺を殺そうとするように睨み付けている。
それはそうだろう。
正妃である槐の死後(玉蘭公主が毒殺したとも言われている)、第二妃であったこの女がいまの後宮の女主。
彼女の望みは、正妃となる事。平民出身の彼女の最大の望み。
しかし、その望みは5年前より絶たれようとしている。
理由は。この俺が(望んではいないが)この城へ来た事により。悍ましい事に、黒騎王はこの俺と結婚する気なのだ。俺にはその気はないが、囚われのこの身で、何が出来る?
精々悪足掻きするくらいが関の山。
ただ、助かった事に神威の婚姻には評議会の認証が必要だ。そして評議会は俺の事を神威と認めないし、婚姻も認めない。だからこそ、なんとかなっているが…。それもいつまでもつものだか。

目の前の黒騎王が、なにやら俺に話しかけている。
だが俺は、その話を聞く気もなく。
自然と昔のことを、思い出していた。
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