恋妃
降り始めた雨は、勢いを増していき。それでも俺は、幸せな気分で過ごしていた。
神威として世界を飛び回っている父上が側にいたから。
俺は父上とともに、寝台にいた。眠りにつくまで、父上の他愛もない話を聞くのが、好きだった。
『…華聖は幾つになっても、甘えんぼさんですねえ?』
俺の髪をやさしく指で梳きながら、くすくすと笑う、父上の優しい声が好きだった。
『おまけにソラまで。貴女に似たんですかねえ?』
俺の脚にしがみついて離れないまま、ソラは父上の寝台の上で、すでに寝息をたてていた。
『まさか、こんなサルと一緒にしないで下さい。父上』
しがみついたソラの手を蹴り飛ばそうとすると、父上が止める。
『やめときなさい、華聖。ソラを起こしたら、かわいそうですよ』
『いいんです、こんなヤツ』
何か夢でも見てるのか、ソラは口をもごもごさせている。又食べ物の夢だろう。

『だめですよ、小さい子にはやさしくしなくては、ね。華聖? 』
『いいんです、こいつは俺のものだし。…れに、人間じゃないから』
そう、ソラは人間じゃなかった。もう数百年も前に絶滅したと思われていた、獣人、だった。

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