嘘や偽りの中で
「亜樹ちゃんさえよければね。」
隼人も併せてなのかそう答える。
「ねぇ。」
「ん?」
「手…。」
握られたままの自分の手に視線を移しながら隼人へ懇願する。
「何?」
とぼけてるのか鈍感なのか隼人はそう聞いてくる。
「離し…。」
「火付けてやるよ。」
私の言葉を無視して花火を手に取り渡してくる隼人。
すっかりペースを狂わされた私は黙ってそれを受け取りしゃがみ込んだ。
ポケットからライターを取り出した隼人が花火に火を点ける。
しばらくしてピンク色の火花と共に球状に花火が火を放つ。
「俺のにも。」
花火に見とれていた私に隼人が持った花火を私の方に傾け、促す。
私はそれに火を移してあげ、隼人の花火が燃えだすと同時に私の花火は消えた。
「早くしないとこっちも消えるよ。」
隼人に促され、足元に持ってきてあった花火に火を付ける。
火の移し合いを何回か繰り越していると
「たまや〜。」
太一の掛け声と共にドラゴン花火が上がった。
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