RIKO
誕生
私は、まだ興奮している感情を静かに抑えた。

ゆっくり深呼吸して、隣のベッドを見る。

寝ているのか今にも泣きだしそうなのか、時々ぴくんと手が動いたり口がふにゃと崩れる。



つい数時間前、この世に産まれたわが子。

5年ぶりの出産だった。

何度経験してもこの幸福感は薄れない。

陣痛の苦しみに耐え、やっと産まれてきたその瞬間、やはり私は号泣した。

無事に産まれてきたことの喜びと、長い時間の苦痛から解放された安心感と。

涙どころか、声まで出して泣いた。

「よかった・・・・会いたかったよ・・・・がんばったね・・・」

まだ浮腫んでいる顔すら愛おしい。

赤ん坊の頭や顔を優しく撫でながら、どれくらいの時間そうしていただろう。

夫はそんな私を同じように優しく撫でながら「がんばったな」と言ってくれる。

一番上の子の時から、かかさず立ち会ってくれた夫。

今回で5回目になるが、私への優しさと労りは変わらなかった。


私が落ち着いて来たのを確認すると、夫は上の子供たちのところへ行った。

待合室で祖父母と共に子供たちも今か今かと待ちわびていただろう。



ほんの束の間、赤ん坊と私の2人きりの時間。

呼吸を整えながら赤ん坊の顔をじっと見つめ、私は心の中でつぶやいた。


”誰の子だろう・・・・・”
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