恋愛症候群
愛美・アイミ・


「愛美ちゃん、2番テーブルお願い」


『はい』


白いロングドレス
ホルターネックで
胸元はフリルが付いていて
谷間を強調するデザイン

背中が大きく開いていて
サテンの生地が体のラインに沿って
モデルのようなくびれと、
上がっているヒップラインを
綺麗に魅せてくれる


『ご一緒します』

「愛美ちゃん!待ってたよ~」

『ありがとうございます、松本さん』


(きっと仕事帰りなのね)

スーツ姿に、少し緩めたネクタイ
昼間は雨降りだったから
革靴に少し泥はねが付いている
確か松本さんは
外回りをしてるお仕事だったはず


『大分酔ってるでしょ』

松本さんのグラスについた水滴を
ハンカチでくるりと拭き取る

「愛美ちゃんなかなか来ないからさ、
飲んで待つしかないじゃん?」

私からグラスを受け取り、
ぐいっ、とお酒を流し込む

「また~、松本さん
さっきまでは美香ちゃん可愛い~とか
言ってたくせに」

「お前、それをばらすなよ~」

ずっと席に付いていた知沙ちゃんが
いたずらっぽく笑って松本さんを茶化す

『いいんですよ、松本さんが皆のことを
好きなことは百も承知です』

私はにっこり微笑んで、
松本さんを見つめた

「参ったな、愛美ちゃんには
頭が上がらん」

松本さんは私に苦笑いをして、
お恥ずかしい、と頭を掻いた


ここは小さな町の
小さな飲み屋街の
小さなスナック『sea』

海が好きなママが
内陸の地に作った『海』

海は全ての命を生み出し
全てが還っていく場所

何かに疲れたひとたちが
帰り着く場所であってほしい
そして、心を洗い流して
またそれぞれの行くべき所へ送り出す
そんな場所にしたいって言ってた
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