俺のこと、惚れさせるから
具体的なトコロは言えないけど、なんとなく、わかった気がする。
「今度は、私がぶつからなくちゃ、だな」
すうっと息を吸って、頬をパチっと叩いた。
「ありがとう、伊藤君」
「おぅ」
私は今すぐにでも翼に会いに行きたかった。
でも、伊藤君は、私の手を掴んだ。
「あの、伊藤く…………」
「俺さ、夏姫ちゃんがいなかったら、まだ弱い自分のままだった。だから、礼を言うのは俺の方」
…………そこで、気がついた。
伊藤君の目に、悲しみは映っていないことに。
…………あぁ、私も救えた。