俺のこと、惚れさせるから
頬をバチっと叩いたら少しスッキリした。
息を思いっきり吸い込んで、体育館に戻ろうとした瞬間…………。
「へひゃあ!」
なんとも間抜けな声がして、ズルリと体がのけぞる。
地面がぬかるんでる?
あ、そういえば今日の朝ちょっと雨降ってたんだ。
ころ……ぶ……。
痛みにこらえようとキュッと目を瞑る、が、痛みはこない。
そーっと目を開けると、
「夏姫ちゃん、大丈夫?」
「…………」
整った顔の男の子が私の手をつかんで支えてくれていた。
この人は…………。
えぇと、ほら、A組の……いと……いと……。
「伊藤君!?」
「ハハ、今、忘れてたでしょ?」