雨の日に君へ
屋敷に到着すると、
ここが俺の家だと一言紹介し
早速中へ入っていった。
大きな鉄格子の門とその奥にそびえ立つ
レンガ造りの豪奢な建物に見とれていた俺は
慌ててビザーリックの後をつける。
客室に通され、
「少し待っていてくれ、準備してくる」
と、十数分待たされた。
天井には重たそうなシャンデリアが
太陽に照らされた水滴のように垂れており、
壁には絵画が数枚飾られている。
絵は詳しくないが恐らく結構高い値が
つくのだろう。床は赤一色。掃除がよく
行き届いているようでシミやホコリがない。
俺の座っているソファは長く座っていたら
きっと、眠くなってしまうくらい心地よい。
と、部屋全体を眺めていると
「おまたせ」
どうやらビザーリックが
戻ってきたよ、う……だ?
えぇ………!?
だ、誰ですか??
「あれ?……あまり驚かないのだね
少々がっかりだよ」
いやいやいや、内心とても驚いていますよ?
表情に出にくいだけ
というか…え?ビザーリック?
そこには先程のキュロットではなく膝竹ほどの紫色ベースのドレスに身を包み、ショートヘアの髪の上には大きなリボンが飾ってあった。
「……あ、あ」
「アハハハ!なんだ驚いているではないか!
改めて自己紹介させてもらうよ
私はビザーリヌ・ド・レーマリ
この屋敷の主人」
女性……だったのですか。
それによく見ると
さっきの男装より幼く見えるような。
子供…だよな。
「ビーズお嬢様は齢16にして
この屋敷を任されるほど
素晴らしい方なのです。」
「それは違うな、
お父様もお母様も単に私が邪魔なだけだ」
その顔…。
また自嘲するような言葉。
16歳の女の子が…いや、16年間
耐えてきたのかな