雨の日に君へ

「……あの、ビザーリヌ」

「その名前で呼ぶな、ヨハン
言っただろう、この名前が嫌いだと」

「……はい、申し訳ありません」

「私はね、この屋敷では
ビーズと呼ばれているのだ」

「……ビーズ」

「なんだい?」

外の雨はもう止んだようだった。


「……その、そろそろ行かなければ」

「ん?どこへ?」

「……あの、俺今日この町に着いたので
仕事や住む家を見つけなければ
ならないのです」

「え?だが今日は空いていると用事はないと
言っていたではないか」

「……はい、ですがこんな時間になるとは」

今、時計の針は17:30を越えたところだった。
1、2時間付き合うだけかと思っていたら
もう辺りは暗くなっている。

「あ、すまない
そうとは知らず…こんなに
付き合わせてしまった!」

「ん?お前仕事を探しているのか?」

「……はい」

「なら私の屋敷で働くといい。」

「「え?」」

「なな、何をおっしゃっているのですか、またいけませんよ?こんな田舎者」

「ほう……。そうかアルフレッド
だがな、ヨハンは料理ができるそうだぞ?」

「……え?あぁ、はい、さっき言いましたね」

「なぬー!」

「アルフレッド、田舎者に負けてしまうぞ?」

「ビーズお嬢様!」

「良いよな?」

「……わかりましたよ、全く
貴女には敵いません。」

「当たり前だ。
と言うわけでヨハン、お前はそれで良いか?」

「……あ」

どうせまた考える暇も
与えてはくれないのだろうな。
けど探す手間も省けたしいいか。
それにビーズのそばにいられるのだから……

「はい……!よろしくお願いいたします」


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