雨の日に君へ
奇の空合いに飲まれる


ここはパリ、
やはり俺が住んでたところより
全然栄えている。

「俺はビザーリック・ド・レーマリ
覚えてくれなくていいよ」

一つきりの傘の下で離さず俺の腕を握ったままの少年は冷めた口調でそう名乗った。
覚えてくれなくていいのなら
どうして名乗ったりしたのやら

「俺はヨハン・ロベール
…覚えますよ、あなたの名前」

「……なぜ?」

「なぜって……人として当たり前では?」

不思議なものでも見るかのように
俺を見上げていた。

「…そうか、そうだよな」

やがて、また前に歩を進めた

雨はより一層強くなる
二人で一つの傘は少々小さすぎる


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