Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
9月のひどく暑かった日、
目の前がゆらゆらと揺れて、
気づいたら地面に倒れていた。
大学の構内だったから、人がたくさん寄ってきた。
と言うのも、声は出なかったけど、
意識はちゃんとしてて、
体が動かないのと、声が出なかっただけで、
意識はちゃんとしてた。
人が集まってきて、周りの声や、
誰かが体を揺すってるのがわかった。
「春?春ちゃんだよね?」
誰かが近づいて来て、名前を呼んだ。
高城君だと思った。大丈夫。
なんとも無いって言ったつもりだったけど、
聞こえないみたいだった。
「俺、今日車で来てるから、
荷物運んでくれる?」
隣にいた友達に、高城君が叫んでいる。
大丈夫だって、
高城君の腕をつかもうと思ったら、
急に体が持ち上がって、
誰かの腕の中にいた。
「救急車じゃなくて大丈夫か?」
「知ってる病院に救急外来がある。
とりあえずそこに連れてく」
すぐ近くで、高城君の声がする。
助けてくれた。
大して知り合いでもないのに。
感謝の気持ちが湧いてくる。
高城君に後部座席に乗せられ、
車が走り出したのはわかった。