Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
春のこと
「お前にしては、珍しい友達じゃないか」
めったに人を褒めない、
祖父が春のことに興味を持った。
恩田春妃、いつも、朱音と一緒にいる子。
俺の印象では、それだけ。
名前ほどの華やかさはない。
はっきり言って。
俺も、朱音やじいちゃんが 、気にするから、
俺も、無視するわけには行かないって
程度に意識はする。
彼女は、
太ってるわけでもないし、
痩せてるわでもない。
顔も目立ってるわけでも、
まったく見られないってほど酷くない。
なのに、春は、
祖父の興味を一心に集め、
わざわざ、家に呼んで、
家庭教師として雇って特別扱いする。
人に対して、ホンとにシビアな見方をする
祖父がこんなに肩入れするのは、珍しかった。
俺だって、じいちゃんのご機嫌は取りたかったけど、
毎週のように、恩田春妃がくっついて来るのは、
ごめんだと思った。
部屋に戻ると、
恩田春妃は祖父と打ち解けて、楽しげに話していた。
「直哉?雪乃は部屋にいたか?」
「はい。もう来ます」
「春ちゃんと、設計図を見たり、
電池の構造の話をしてたぞ、
彼女は、なかなか飲み込みが早い」
「まあ、一応理系だしな」
ほら、まただ。
祖父は、俺が母親に似て、
理系の才能を受け継がなかったことを嘆いている。
「理系だからって、
みんな理解できるわけじゃないぞ」
「そうでしょうね」
祖父が、優秀な人間を見ると、
自分の孫だったらいいのに、と考えてるのがわかる。