Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
雪乃のことで気になっていたことがあった。
何か悩んでるのかなと思った。

まあ、俺なんかよりしっかりしてるけど、
一応年上だし、兄貴だし。

春妃なら、何か知ってるのかと思って、
チャンスがあったら、聞き出そうと思っていた。



この頃、雪乃と春は、
こそこそ二人で何か企んでいる。
雪乃の部屋から、
ひそひそ話す声が聞こえるから。


数学の授業の日、
春とラーメンを食べながら
どうにも気になって、
雪乃の事を聞こうと思った。



「雪乃ちゃん?別に変わった事なんて無いよ」


「でも、何かあっただろ?」


「そうだなあ…雪乃ちゃん、何か
高城君に話さなかった?」


「だから、聞いてる」


「雪乃ちゃんが黙ってるなら、
私からも言えないよ」


「一応、俺、雇い主なんだけど」


「そうだったね」
春は、からかうように笑う。



なんて事はない、平凡な顔。
ラーメンすすってるし。

とっくに食べ終わった俺は、
そのことに、安心してずっと見ている。


鼻なんかすすって、
俺のほうが、みっともないって、
ハンカチ貸してやったのに、


なのに、次の瞬間、予想してないって時に限って、
ありがとうって、君は、不意に笑いかける。
なんで笑うのって、気になって君から目が離せない。


ずっと見てると、春の顔は、飽きることがない。

何か思いつくと、瞳が輝いて、
何かを思い出したように笑う。


そういう彼女の仕草は、
平凡なのに、
どうして見ていたいなんて思うんだろう。



彼女は、数学を教える時
いったい、どうやって、
出来の悪い生徒に理解させようと苦労してる。

俺にわかる、言葉を絞り出すために、
結ばれたり、緩められる唇が、
ほんのり赤くなる唇が
とても愛らしい。

それが見たいがために、何度か理解してないって嘘をつく。

でも、春は、気づいているんだろうな。

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