Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
「こういうの、やきもちって言うのか」
浅い眠りから覚めて、
突然悟ったようにナオが言う。
そうだと思うよ、ナオ。
口にする代わりに、ナオの額にキスをする。
「ちょっと、腹の虫が暴れただけよね?」
おめでとう。
これで、今日から、
嫉妬と自己嫌悪と親しくなれるのね。
ナオは、これまで、
ずっと無縁の感情だったと
言わんばかりに、戸惑っている。
「いろいろ分析するのはよくないよ」
私は声色を真似てナオにいう。
「ごめん。どうやら、
君のことになると、
コントロールがきかないらしい」
「わたしのせいなの?」
「ああ。だって、春以外のことは、
俺どうでもいい」
「なんてこと言うのよ。いいわ。
不幸な品物のことは、忘れるしかないようね。
部屋の模様替えだと思えば。
そんなの痛くも、かゆくもないから」
私は、ナオに笑いかける。
望みのなかった十年間に比べれば、
こんなのは、何でもない。
「君は、俺のこと、ずいぶん甘やかすんだね」
「過保護にして、底なし沼のように、
抜け出せなくする作戦だから覚悟して」
「こんな居心地がいいなら、
いくらでもはまってるよ」
ナオは笑う。
そうなのだ。
私は、ナオから受けることなら、
苦痛でも孤独でも構わない、
なんて本気で思ってる。
恐ろしいことに。