Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~

「ちょっと待って、
たいしたことないって?なに」
ナオがにらんでる。全然笑ってない。


ナオが、私の顔を覗き込んでる。
思い切り不審そうに。顔近いって、ナオ。


意味が分からない、
という表情で私の答えを待っている。


何か、気に障り過ぎること言ったらしい。
でも、キスでいたぶるのは止めてくれた。


「ああ、ごめん。
話に聞いてた、凄いキスじゃないだなんて
言われて、気にしちゃった?
ごめん。取り消すから。気にしないで」


経験がない分、知恵で切り抜けるしかない。
ナオにやられっぱなしでは、身が持たないぞ。


ナオは、まだ、納得行かないって顔で、
私からなにかを、聞き出そうとしてる。

にらめっこも疲れたよ、ナオ。
負けでいいからと、目を反らす。


「ちょっと待て、いい逃げするなよ。
それ、どういう意味?
期待したほどじゃないってこと?」


ええっ?ちょっと、全然違うって、
いや、そこまで言ってないってば!


今度は、私が驚く番だ。


今、あなたが、キスした相手は、
あまりのことに、心臓が止まるほど、
衝撃を受けたと言うのに。


溶けるほど、
どうなるとは思わなかったけど…



「じゃ、もう一回試して?いい?」


ぶるぶると首を振る。

うわーっ、もう一回とか勘弁してください。
心臓が持ちません。


「もうダメだって。
こんなことやめよう。ね?
私、相手にゲーム仕掛けても面白くないし」

ナオが珍しく食い下がる。

「俺、聞きたい。春がどう感じたか。

今度は、ちゃんとわかるようにするから。

それとも、俺じゃダメか?
他のやつじゃなきゃダメなのか?」



「ああっ、待ってよ、何ていうか…
友達同士が、ふざけただけのキスだから。
こんなの事故で起こっただけだからね、気にしないで、ナオ?」


経験豊富な、朱音みたいな女なら、
そういうだろうな。きっと。


ナオが慌て否定する。

「違う。決して
そんなつもりでしたんじゃないって」


「どんなつもりでも、もう次は無いから…」


「春はそうしたいのか?」


「うん」


「わかった。今日の所は、
君の言う通りにする」
< 20 / 321 >

この作品をシェア

pagetop