Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
「何か音楽でもかけようか…」
「いいよ。気にしないで」
私がどうしてるか、
なんて気にする必要ないのに。
私は、運転している高城君の様子を、
もう一度見た。
表情からは、彼が何を考えてるのか、
わからない。
ラジオから聞こえて来る、
やたら明るいおしゃべりが、
どうしてか、悲しく聞こえる。
高城君は、ずっと黙ったままだ。
私は、不意に、いたたまれない気分になった。
「あのね、私…父親と母親のことを
“あの人達”と呼んでいるの。
だから、今日、急に別れることになっても、
そんなに悲しくないと思う」
高城君は、少し驚いたようだった。
それから、しばらくして
「そんなこと言うなよ…」
と聞こえるか、聞こえないか、
わからないくらい小さな声だった。
そんなこと、言うなよっていうのは、
言われても違和感がない言い方だと思う。
わりと好きだと、さえ思った。
というのも、
私が考えてる家族のイメージを口にすると、
たいていの人は、驚く。
そんなはずないよ。
きっと誤解だよ。と人は、すぐに言われる。
まだ、よくわかってなかった頃は、
自分の気持ちを、必死になって
わかってもらおうと説明したけれど、
途中でそれは、無駄な努力だと気づいた。
人は、そういう話を聞くと、
心配してるという気持ちや、
同情以上に、聞きたくない、
知りたくないって、いう気持ちになるらしい。
そして、そんな奇抜な家族ドラマや
海の向こうのかわいそうな話なんか、
やめろと言うために、
“そんなことないよ”って言うのだ。