Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
「春、ちょっと来て」
私は、母に呼ばれて病室の外へ出た。
廊下の端にベンチがあったので、
そこに座った。
「ねえ、春?こっちに来る前、
あんた叔母さんの所に行ったんでしょ?」
「うん」
「話、聞いた?」
「話?」
「拓也君、
お前のこともらってもいいんだって。
拓也君なら、昔からよく知ってるし。
悪い子じゃないよ。よかったじゃないか」
母は、叔母からこの話が出た時点で、
娘の将来より借金の棒引きを選んだのだ。
「お母さん、何言ってるの?
行くわけないでしょ。
借金なんて、私がしたわけじゃないもの。
私には関係ない。
いったい、何の借金したの…」
「知らないわよ。
いつの間にかそうなってたの。
でも、春ちゃん、お金払わないと、
あの家取られちゃうのよ」
「持ってるものを取られるのは、
今に始まったことじゃないでしょ?
例え、私が大学を途中で止めて
お金を作ったって、
またお金を誰かに借りるだけじゃないの?」
「そんな事言わないで、
卓也君なら十分じゃないの。
地元で仕事探して、子供産んでよ、
私、早くお祖母ちゃんになりたいな」
「冗談じゃない!そんなの絶対にいや」