Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
やっぱり来るんじゃなかった。
どんなに時間をかけて話し合っても、
母は、私のことを都合のいい時に
利用できる娘としか思ってない。
この世で私を大切にしてくれたのは、
祖父母だけだった。
その思い出の家が無くなろうとしている。
病室に戻ると、
拓也が高城君に何か話しかけていた。
「じゃあ、俺仕事行くから、後でな」
拓也は、
そう言って私の背中をポンと叩いた。
今までだって、
気安く触ってきたりしなかったのに。
「高城君、拓也に何か言われた?」
「ああ。春のことはもういいから、
東京に戻ってくれだって」
「うん」
ここまで連れてきてくれた、
高城君には、もうわがままは言えない。
「俺、まだ居たほうがいいだろ?」
「いいえ。学校始まってるし。
もう十分だから、東京に帰って。
今までありがとう」
「ちょっと待てよ、
全部話し聞いてねえけど、
全然、大丈夫には見えないけど、
どうするの?」
「何とかなるから。
そうして…ありがとう」
「お前ねえ、どう見てもお前一人で、
何とかなる見込みなんて、ないじゃねえか」
「でも、高城君に、どうにかしてもらう
問題じゃないから」
「まあ、俺がいても、
大して役に立たないけど。
さっきじいちゃんに相談して、
会社の顧問弁護士、
こっちに遣ってもらったから、
午後には着くと思う」
「ええっ?」
「ええっじゃなくて、
この近くのホテル予約したから、一旦帰るぞ」
「高城君、どういうこと?」
「行くぞ」