Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
春は、珍しく地元の酒だといって
日本酒を持ってきた。
「私は、もう二十歳を超えてるけど、
高城君は?」
父のとこにあったお酒を、
持ってきたと春が言った。
「もう少し先だけど、実は、
高校生のときから、少し飲んでるから」
なんだか、春は変だった。
最初から、無理に酔うつもりで
飲んでるみたいに。
案の定、酔い始めてすぐ、
今日のことは、
どう償っても、償いきれない
と言って泣き出した。
「いいよ。そんなこと気にするなって」
「こんなことしか出来ない」
って言ったのが先だったのか、
「高城君のこと好きになったみたい」
って言ったのが先だったのか、
思い出せないけど。
春が、俺に抱きついてきて、
キスをしてきた。
あまりに突然で、
心の準備が出来ていなかった。
春に抱きつかれて、キスされて、
頭が真っ白になった。
「春?ち、ちょっと待って…」
キスを返したいのに、腕が動かない。
強く引かれるのに、
酷く悪い事をしている気分になる。
春が触れたところから…
春の唇が触れた所の肌という、肌に、
身体中が反応し、身悶える。
こんなこと…初めてだった。
性欲とは、別の次元の強い感情?
どうしたんだ?
急に、怖くなった。
彼女の存在が何だか分からなくて。
はっきり言って、俺は、まだ子供だった。
訳が分からない感情を、
恐ろしいと思ってしまった。
身体中の血液が、
逆流したみたいに体が、反応して、
自分でも、
どうしたらいいのか分からない。
俺は、酷く混乱した。
こんなことしか出来ないって、
どういう意味?
そんな事、言わなければ、
俺は応えてたと思う。
純粋な好きって言う気持ちと、
体でしか償えないって言う
気持ちが混ざっているのは、
よくないと判断した。
それ以上に、俺は、
春妃が怖かった。
彼女に対して、何も抵抗することが出来ない
無防備な感情に。
「春、ちょっと待って…。
頭が混乱してる時に、こんなこと良くないよ」
俺は、春の体を優しく抱きしめた。
「ごめん、私ったら、何てことを…」
春は、さっと俺から身を引いた。
「ごめん、私、どうかしてた。
こんなこと2度としないから…」
俺は、春がキスしてくれたのを、
自分の腕で制してしまった。
春のキスが、他の誰とも違う感情を
引き起こすことに、面食らった。
あまりの衝撃で、
目が眩んで判断を誤ったのだ。
春は、これを拒絶とった。
東京に帰って、祖父や父に、
感謝の気持ちを表すために、
いろんなことをしてくれたけれど、
春は、自分から俺に近くことも、
触れてくることもなくなった。
それから、学校の構内で、春が違う
男に肩を抱かれて、歩く姿を見かけた。
春に近かづくために、
やったことなのに、
俺は、春を遠ざけてしまった。
そのあとも、修復出来ないまま、
時間だけが過ぎた。