Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
それまで何となく鉢合わせずに居たのに、
その日に限って、
ナオも休日出勤して留守だった。
インターホンがなって応対してから、
しまったと思った。
その日は、予定ならもっと早く
出かけているはずだった。
「失礼するわ」
ナオの母親は、
これ以上ないという具合に
威圧的な態度で現れた。
私は、ドアを開け
「どうぞ、と招き入れた」
ソファに腰かけ、
出されたお茶なんかに目もくれず、
「失礼ですけど、家の息子とは…えっ?
あなた、まさか…」
「ええ。お久しぶりです。お母様」
「あなた、確か…」
「雪乃ちゃんの家庭教師してました。
恩田と申します」
「まあ…まあ、
雪乃の時には、本当にお世話になったわ」
「ありがとうございます。
でも、雪乃ちゃんの力ですから」
「あの後、ちゃんと医学部へ入ったのよ」
「はい。存じております」
「じゃ、私がここに来た理由も、
お分かりになるはずでしょう」
「すみません。最近は憶測で
物事を考えないようにしてますので」