Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~


ナオは、リビングに入って来るなり、
深々とソファに腰をおろした。
ふうっと、息を吐き出す。


「食事はいらないや。食べてきた」


「そうなんだ…」


「ごめん、連絡すればよかった」


「いいよ。冷蔵しとくから」



ナオは、ネクタイをゆるめて、
無造作にソファに投げた。


「疲れたな…」


「シャワー浴びて寝るよ」


ナオは、ソファにもたれたまま、
目を閉じている。

そのまま眠ってしまったのかな。
近づいて、上からのぞき込む。


疲れた顔も、間近で見ると、
男らしくてきれいだ。
触れようとしたら、ナオと目が合った。


私は、顔が強ばらないように、
ナオに笑いかける。


今まで、頭のなかにいたのは、
さっきまで一緒だった朱音の顔?

ふと、口から出そうになった。



あわてて関係ないことを言う。

「あの…ナオ?私、
新しいプロジェクトに入って、しまったの。
本格的に動き出したら、
忙しくなって、帰りも遅くなるけど…」



「わかった。明日話を聞くよ。

それより、クローゼットのスーツが、
結構な数、行方不明なんだけど、
君はどこに行ったか知ってる?」



「クリーニングに出してるの」



「あれ、全部かい?」



「明日には、帰ってくるから。
気がつかなかった。ごめんなさい」



「春?あのさ、俺の世話なんか焼かなくていいから。
君は、奥さんじゃない。自分のことだけしてて」



「ん、ごめん。余計な事しちゃった。
そうだね。気をつけます」



ナオが残していった
ネクタイからも、朱音の匂いがした。


彼女がいなくても、朱音の匂いが存在感を発揮してる。

あのスーツをクローゼットの中に入れると、
同じ匂いで満たされていくだろう。



ナオは、私が忙しくなって、
会う時間が減ってしまっても、
寄るところがたくさんある。

友達も多いし。


朱音に会いに行ってると、
言ってくれればいいのに。



その事で、私は、
あなたを責めたりしないし、


もし、そうなら、
覚悟ならとっくに出来てるから。

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