Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
「振られた?冗談じゃない、
振られたんじゃないさ」


並べられた缶ビールをもうひとつ取り、
プルタブを引く。


「じゃあ、逃げられた」
朱音の低い声がむかつく。


「何とでも言えよ」


「どっちも同じだね…」
今日の朱音は、やけに引っかかる。



「あのさ、ナオ。
こうして二人して、グダグタ言ってる間に、
春ちゃん、迎えに行ったら?
あの人の所、行っちゃったら取り返しきかないんじゃない?」


「何言ってるんだ?
俺達は、少し頭を冷やしたいだけだ」


「あたしは、最初から望が無いけど、
辛いよな。
手にはいると思ったのに、
幸せが、指からすり抜けてくの」


「感じ悪いな。お前」


「はああ…」
イラついてたと思ったら、ため息をつく。
何で朱音が落ち込むんだよ。


「何だよ」


「今回は、どうかな。ナオ、覚悟できてる?
前野さん、ちゃんと春妃をつかまえて、
離さないんじゃないかな」


「あいつのとこに行くっていなら、
それが春の意思だろう」


「ナオって、本当お坊っちゃんだよね」

わかってないって顔で、首を振るな。


「どういう意味だよ」


「必死になったことないでしょ?
かっこ悪くたって、
ナオは、必死になること無いもんね」


「そのくらい、あるさ」


「春ちゃん戻って来なくても、
耐えられる?」


「春が?いなくなるって、急になんだよ」

ちょっと、朱音は、なに焦ってるんだ?

春と俺は、
お互い冷静になっておきたいだけだ。



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