Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~


会議は、長引いて、
溜まっていた仕事を片付けていたら、
夜の九時を過ぎていた。


「春妃さん、まだいたんですか?」
前野さんに聞こえないように、
由貴ちゃんがささやく。


「そろそろ帰るから…」

その時、前野さんが立ち上がって、


「春妃?帰るのか?ちょっと待って、
すぐに俺も出られるよ」
久俊さんが、帰り支度を始めた。


「係長?ちょっと、いいですか?」
由貴ちゃんが、すかさず声をかけた。
早く行きなさい、と身振りで示す。


私は、由貴ちゃんありがとう
と手を振り、オフィスを後にした。


ナオ?
雨が降ってるし、遅いから、
もう帰ったに違いない。


居るわけがない。



だから、それを確かめるだけ。



なのに、
雨の中、自然と足が早くなる。


やっぱり、会いたかったんだ。


一目でいいから姿を見たかった。

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