Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
堀田社長にアポを取ったら、
何故かオフィスではなく、
普通のお店を指定された。


バーのようだ。ごく普通の。


カウンターにテーブル席が少し。
先に着いたので、テーブル席に着く。


「ごめん、待たせちゃった?」と、
すぐに、社長が到着する。


こうやって見ると、社長といえども、
春と同じ年の、普通の女性だ。

恐ろしく綺麗で目立ってるけど。


カウンターに向かって注文する。
「マスター!水割り。
前野さんも、それでいい?」


「はい、なんでもいいです」


手馴れてる。こういうところは、違うかも。



わざと威厳の保とうとする会社での顔と違って、
彼女は、何故か嬉しそうだ。



「会社だと、話せないから…」
と、意味ありげに微笑む。

ん?

いったい、何を言い出すんだ?
水割りを一口飲んだところだから、噴出すところだった。


「仕事の話が、どうしてできないの?」


当然、というように、悪びれずに言う。
「仕事?仕事の話なんか、何で今するのよ」


なんか、様子が変だ。
ペースに巻き込まれないようにいう。

「仕事の件でと言って、
アポとりましたけど、聞いてませんか?」

さすがに驚いた。
いい加減な人には、見えない。



「まあ、いいじゃないの、
悲しい思いをした者同士、飲むぞおー!
慰めあおうと思って、ね」



危うく聞き逃すとこだった。
「ちょっと待って、それ、何の話?」


「失恋!に決まってるじゃん。乾杯!!」


半分、あきれながら言う。
「あの、商談は?」



「そんなの、いつでもいいじゃないの。
それに、私達は、今それどころじゃないの」


何だって?
俺、おちょくられてんのか?


「ビジネスの話は?」


「こんなところで、そんな話するほど、
野暮じゃない」



「だったら、これで帰らせてもらいます」



「堅物」
わざと、怒らせるようにいう。
いい性格してんな。
そんなことに、引っかからないけど。


「それで、結構ですから」
立ち上がろうとする。
春には悪いが、付き合いきれん。


「仕事、欲しいんでしょ?
話くらい聞きなさいよ」


「仕事の話以外なら、遠慮します。
それに、仕事なら、困ってませんから…」



「仕事できるんだってね。
引く手あまたなんだって?
春妃に聞いたよ。
それで、
何で?春なのよ?」


「はあ?」

話が見えない。
ビジネスとまったく関係ないんだが。



「いいから、教えてよ。
何で、春妃じゃなきゃ駄目なのよ」



「そんな、教える義務なんかありませんよ」



「なあんだ。意地悪だし。面白くない人」



「よく言われます」






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