Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
何年も前の事だし、
今更あんなやつのこと、
春が気にしてるとは思えない。
でも、確実に俺の知らないところで、
春の生活がある。
当たり前じゃないか。
春だって28才の普通の女性だ。
恋人も作るし、恋人がいれば…当然…
あっ…
そういうことあんまり、考えて来なかった。
あんなやつとキスしたのか?
あんなやつに…
あの時、紳士ぶって、
春のこと受け止めてやらなかった、つけだ。
悪いのは、俺だし。
でも、納得出来ないよ、春?
何であんなやつと…
何で俺じゃなかった?
今だって、春にも、夜になると、
ベッドで甘い言葉をささやいてくれる
男がいるかも知れない。
駄目だ…
他の男が、春妃に触れるなんて、
耐えられない。
強烈な感情に支配されて、
身動きが取れない。
何で、こんなに苛つく?
何が、原因何だよ。
そんなことわかってるさ。
あいつは良くて、俺は駄目なんだ?
どう見ても、俺、見た目は悪くないし。
あいつより、周りの環境にも恵まれてる。
ひょっとしたら、
そういうのが、ネックなのか?
春は、俺のことなんか、
男として認めないのか?
どうして…
どうしても気になって、
朱音に連絡を取った。
どうも変な気分だった。
妙に落ち着かなくて、気だけ焦ってる。
朱音と話せば、理由がわかるかも、
と俺は思った。
本来なら、こういうのは、
春に相談してたけど、
本人を目の前にしては、何も言えなくなる
「ごめん、急に呼び出して」
「連絡くれるのは、構わないよ。
でも、遅かったじゃない。
もっと早く連絡くれると思ったのに」
店の名前にもなってる、
「Longing Love 」
の曲がBGMとして流れてる。
朱音は、いつものように、
だるそうな低い声で注文する。
「水割り」
朱音に万年片思いだって、
マスターをからかう。
朱音が
「呼び出すなんて、珍しいわね」と笑った。
普段は、どっちかの家で飲む。
けど、今日は気分を変えたかった。
「ああ…実は、春の事なんだけど」
「実は、だなんて、わざとらしい。
ナオは、春のことで、頭が一杯じゃないの。
で?どうかしたの?」
「この間、ちょっと噂を聞いて…」