Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
ビールが来て、取りあえず乾杯したあと、
お互いの近況報告。
「うーーん、胃袋に沁みる…」
「お疲れ」とそっけない彼。
学生のノリでジョッキを、
軽く触れ合わせるのも、何年も続く儀式だ。
私は、ほんとのプライベート以外、
ナオに何でも相談する。
仕事で行き詰ったこと、職場での人間関係。
あるいは、努力が実って、
成果をもたらした時、
まず誰に報告するかというと、
私はナオの顔が浮かぶ。
ナオとは、良いことも、悪いことも。
一番に共有したいから。
普段の私は、
常識や、人間関係のしがらみから、
少しも抜け出せないでいるから、
ナオみたいに、
反対方向から飛んでくる、
自由な意見は、いつも目から鱗なのだ。
ナオも、私のことを、
貴重な友人だと思ってるはずだ。
多分。
思ってなかったら悲しいけど。
「どうかした?」
「何でもない。そういえば、
…髪の毛切った?」
慌てどうでもいい話題を振る。
「ああ、切ったけど。変か?」
いいえ。そんなことないよ。
どんな髪型にしたって、
ファッション雑誌から、
抜け出したようですから。
「違うの。ナオがちゃんとしてるのを見て、
私も自分の髪の毛、
どうにかしなきゃと思っただけ」
ナオは、私の髪に視線を落とす。
「髪形変えるの?」
「それには、
美容院に行く時間を確保しないと」
「忙しいのか?」
「うん。ちょっと、トラブルが続いて」
私は、自分が抱えてるトラブルで、
先週から家に帰れない日が続いた。
と言った。
「そうか」不機嫌そうに目を伏せる。
彼は、女性に徹夜仕事をさせるのは、
反対なのだ。
でも、長い付き合いの中で、
お互いの仕事の批判は、
しないことにしてる。
お互いに、気持ちよく、居られるためだ。
「ちょっと、髪を上げてみて。
ゆるく後ろにまとめて」
彼の方が気持ちを切り替える。
私は、お安いご用よと、
言われたとおりやってみる。
「うん、そのほいうがいい。
春妃は、うなじがきれいだから、
髪を上げて見せたほうがいいよ」
「そう?気が向いたら、そうしてみようかな」
「ああ、そうしろよ」
「そっちは?仕事忙しい?」
「相変わらずだよ」
ナオと私は性格も見た目も正反対だ。
ナオの性格はおおらかで、
この人が何かしようと本気で
あせっているのを、私は見たことがない。
育ちのいい、品行方正なお坊ちゃまタイプで、
十分恵まれた環境で育ったから、
人と争う必要がない。