Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
正直、あまり、
親切な対応したとは思えないから、
しばらくして、
何事もなかったみたいに、
高城直哉が、私に会いに来たのは驚いた。
彼は、私の席に近づいて来て、
「君、どうしてこんな一番前なんかで、
講義受けてんの?」と言った。
「いえ、あの…」
この間の対応に、
腹を立ててると思い込んでいたから、
普段通りに対応されて、ひどく驚いた。
私が座る席は、大教室の、一番前の席だ。
私は、いつもそこに座っていた。
講義を真面目に聞きたい
というのもあるけれど、
本当のこと言うと、
前の席で、おしゃべりされるのが
うっとうしいからだった。
けど、そういう勇ましい理由は、
何故か出てこなくて、
迷った挙句、
何故か、しどろもどろになって答えていた。
「ここが好きだから…」
「本当に?それは、変わってるね」
彼は、まだ、講義が始まる前の、
がらんとした教室を見回した。
「朱音なら多分来ないよ。
何か、用事なら伝えとくから」
「あのさ、俺、今日は、
君に用があって来たんだ」
「何?用って」
高城君は、
ラルフローレンの広告から抜け出てきた、
良いところのお坊っちゃまそのままの姿で、私を見下ろしている。
こういう人に頼まれるなんて、
雑用ぐらいなものだから、
私は、聞く前から断ろうと思っていた。
「昨日、朱音と話をしたんだ」
「そう、よかったわね。
じゃあ、直接連絡すればいいじゃない」
「連絡は付いたけど、彼女、
君と一緒じゃないと、
出かけないっていうんだ」
「何で、私が?」
「彼女、君がいないと
間が持たないんだって」
何だ、それ。
そんなんで、ひき下がったの?
嘘に決まってるのに。
「それなら、行くって言っておいて、
ドタキャンすればいいから、
適当に二人できめれば?」
「その時はそう聞いた時、
その日の予定は、すべてキャンセルだって」
「朱音ったら、何を考えてるのよ」