Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
ナオは几帳面に、お絞りのタオルの端を、
ぴったり揃えて四等分する。

話に詰まったときとか、
言いにくいことを、
言わなきゃいけないとき。

特にそれがひどくなる。

この作業が毎回、
こういう店に来るたび見られて、
儀式のようで面白い。


この男、表面はものすごくおおらかで、
何でもいいよと、
笑って受け入れそうなのだけど、
実は神経質で、お絞りは、一ミリでも狂うと、
気に入らなくてたたみ直す。


彼の部屋にある洗濯ばさみと、
ハンガーは無印の白一色。

これ以外の、
赤や黄色のカラフルな洗濯ばさみは、
異分子として、彼の部屋から、
つまみ出される運命にある。


学生時代に、
彼の家に遊びに行ったとき、


「春にあげる」といわれて、


袋一杯の洗濯ばさみと
ハンガーをドサッと渡された。

多分、泊まった女の子が、
そっと紛れ込ませたのだと思うけど。


どうして?と理由を聞くと、


洗面所が、白一色にきれいに
統一されてるのを見せてくれた。


だいぶ前の話だけれど、
多分、そういう好みは、
変わってないだろう。

< 6 / 321 >

この作品をシェア

pagetop