Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
あたりまえのもの
何時だ?
酔ってふらついた頭で、
携帯の画面を見た。
手元が怪しいのは、
くっついてきた女の子を、
撒くのに苦労して、
横断歩道を全力疾走したからだ。
まったく、
モテていいな、なんてやつがいたら、
俺の代わりに走ってくれ。
見た目に自信のある女は、
はっきり言って嫌いだ。
酔った振りして、
俺の腕にくっついて離れないし、
突き放すと、
俺の部屋番号聞き出そうとして、
必死だったから、
部長の番号言っておいた。
しかし、誰だこれ?
俺のアドレス聞き出されたかな、
なんて心配して、メールを見た。
そのメールには、
いきなり「バカ!!」と書かれていた。
バカって何だよ。
送り主に見覚えがなく、
添付ファイルが無ければ、
無視するところだった。
何気なくファイルを開いて、
言葉をなくした。
夜、ホテルの部屋で
一人でいる時でよかった。
同僚が近くに居たら、絶句してただろう。
知らない男が、春妃に腕をまわして、
頭にキスしようとしている。
絵葉書のような写真。
春に気があるのは、一目でわかる。
春を見るとき、
俺もこんな顔してるだろうから。
だから、余計に腹が立つ。
俺のいない間、
春は、こいつとずっと一緒だったのか?
プロポーズするくらいだから、
春とは他人ではないんだろう。
俺の知らない、春妃を。
そう思うと、のどが締め付けられる。
春にだって、男との経験が無いわけない。
そんなことわかってる。
俺はそもそも、春のこと言えた口ではない。
でも、そんなこと関係なく、
酷く不愉快な気分。
何で、春は、
そいつに触れられて笑ってるんだ?
そいつは、俺の知らない春を知っている。
俺には、拒絶した場所を。
それに、春の表情にもムカついた。
そいつのこと、嫌がってないじゃないか。
そんなことって、あるのか?
春、お前そいつに触れられて、
嫌じゃないの?
気がついたら、春に電話していた。
ダイヤルして、
春、ひとりじゃなかったら、
どうしようと思った。
でも、
そんなことより、声が聞きたかった。
お前、そんなやつ好きじゃないよな?