Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~


「香津美さんは、全然悩まなそう…」

特に、毎日息子さんが作ってくれる
おにぎりに、パクついてるのを
見てるとそう思う。

だいたい、毎日おにぎりじゃ、
変化の兆しを、とらえる事は出来ない。


「失礼な。今は、こんなんだけど、
昔は一応、悩んだのよ。

一応、これでも選択肢はあったからねぇ。
まあ、悩んでも無駄だったけど」


私は、お箸を持つ手を止めた。


「どうして無駄なんですか?」

「人間、よっぽど出来てないと、
好きじゃない方なんて選べないからよ」


「不吉なこと言わないで下さいよ」

「どうして、好きじゃない人なんて
選らべんのよ?
相手が拒絶したり、決定的な障害もないのに」



「でも、最初から、
壊れるってわかってるのに、選ぶのは?」


「壊れるって何でわかるの?

予想なんて、先のことでしょ?

当たらないかもしれないじゃない?

それに、壊れたっていいのよ、
思い込みが1つ消えて無くなるだけでしょ?」


「思い込みだなんて…」


「じゃあ、執念。
付き合って、
幻滅するかもしれないなんて、
勝手な理想像を、相手に押し付けてる
だけじゃないの。
どんだけ相手に失礼なのよ」


「香津美さん!」


「いくら心の中でキレイに美化しても、
取り出してよく見ると、大したことない。

意地はって守っても、
正体なんてそんなもんよ。

若いんだから、思った通り行けばいいの。
先の事なんか、
私達の年になってから、考えんのよ」

パン、と1度香津美さんに背中を叩かれた。

やっぱり、香津美さん面白い。
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