Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
私は、空になったグラスをもて余した。


「聞く前から何だよ」


ほら、蒸し返す。
最初から聞いてくれって頼めばいいのに。


「しょうがないな。ほら、
言ってみなさいよ。聞いてあげるから」


ナオの新しい、恋愛の話だったら、
聞きたくないけど。




ナオは、急に私の目を見た。
今、なに考えてるのって探るように。


覗き込むな。人の顔を…

今日は、狭い店だし、
お互いの距離も近いし、
そんなの、反則だから。


「な、何よ。どうかしたの?」


だから、急に、顔を近づけるの止めて。
ねぇ、お願いだから、
じっと見ないで。顔、赤くなっちゃう。


彼は、ビールを一口飲んで、
ふーっと吐き出す。

「春はさあ、そういうの、
あんまりなさそうだな」

なくて悪かったわね。


だから、1人と長く続くんだから。
そんな悩み、私に聞かないでよ。


「そういうのって?」
ちゃんと、聞いてあげる。


ここ、聞くの無駄だけどお約束。
ほんと、めんどくさいやつ。


「だって、春が男のことで、
悩んでるとか聞いたことないし」


なぬ?人を何だと思ってる?
つい、意地悪したくなる。


「そうだっけ、まさか、悩まないわけないよ。
あれ? 私、
ナオにそういうの話してないか…」


言い過ぎたかな?
ナオの顔がさっと曇り、
ちょっと真剣な表情になる。


「えっ?嘘、お前、男のことで、
悩んだりすんの?」

失礼だろ、それ。
「まあ、それなりに」

ナオったら、
私なんかに、恋愛の機会は、
一度もなかったと思ってるのかな。
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