Longing Love ~あなたに恋して、憧れて ~
タクシーはホテルの前に横付けされ、
ドアマンに恭しくかしずかれた。
由貴ちゃんはそれだけで舞い上がっていた。
重厚な雰囲気に圧倒されそうな建物の中を、
ナオは気にせず進んでいく。
エレベータに乗り込み、
最上階のボタンを押すと
このホテルのメインレストランの
フロアに着いた。
私のような、普通の人は、
都会に来て十年になるけど、
何かの記念日じゃないと、
こんな高級な店で食事をしよう何て思わない。
ナオも朱音も、
日常的に待ち合わせに
気軽にこういう場所を使っていた。
最初に、こんな場所に連れてきてしまうと、
自分だけは、特別なんじゃないかと
勘違いしてしまう。
特に、私のような田舎者は。
「何でもいいって言ったから、
フレンチでいい?」
「はい」
「どうぞ」
ナオは、由貴ちゃんの背中に手を添えた。
ちゃんとエスコートしてくれてる。
ナオにありがとうと呟く。
「高城様、お待ちしておりました」
支配人らしき人が来て、
私達に丁寧に頭を下げた。
「急で申し訳ない」
「いえ、
いつも、お越しいただいておりますので」