雨粒ひとつ~メガネをかけた女の子の恋の話
ーーバスにあたる雨の音を聞きながら、失恋を思い出すーー
家の近くのバス停に着くと、私は一番先に降り、目の前のコンビニの軒先に逃げ込んだ。
制服についた雨粒をハンカチではらいながらバス停を見ると、私と同じように傘を忘れた人たちが、コンビニの店内へ走って行く。
(…傘どうしよう…、もうちょっと待てば
やむかな……)
そう考えながら空を見上げ、雨粒がついたメガネが気になり、はずして、持っていたハンカチでメガネを拭きはじめた。
その時、バス停からコンビニへ走ってくる人影が私に近づいてくる。
「…やっぱり千夏だー!!」
(……良太!!??)
あまりに突然で、声もでない。
慌てて拭き終えたメガネをかける。
そこには、制服についた雨粒を手ではらいながら、少しだけ息を弾ませている、いつも見ていた笑顔の良太がいた。
「…良太!どうしたの!?」
「どうしたの?って、、、千夏を見かけたから、声をかけたんだろう。」
「・・・・」
戸惑っている私とは反対に良太は言葉を続ける。
「それにしても、久々だよなー。卒業式以来かー??
…そういえば、お前メガネしてたっけ??」
私は、良太の言葉を遮るように、やっと口をひらいた。
「あれ??良太…今日、部活は…??」
「あー、今日は休み。急に、監督に用事が出来ちゃってさー」
「そうなんだ…」
「まー、夏休みに入れば、ずっと練習だから、今日はゆっくり休んどけって。」
「ふうーん。そうなんだ。」
横に立っている、良太をチラッと見る。
あの頃より日に焼けて、少し大きくなったような…
前よりも見上げている私がいた。