ゾンビバスター~4人の戦士たち~
 いつもとちょっと違う聖に構ってもいられず、部屋へ戻ると明日からの準備を始めた。
 荷造りも済ませ、一通り準備をやり終えて一息つくと、もう0時を過ぎている。
 窓辺で見上げる夜空には、きれいな三日月。
 空の上はこんなに静かなのに、地上のあちこちではゾンビの魔の手に脅かされて過ごす人々がたくさんいる。
 明日から……ううん、今日からその人たちを助ける旅に出るんだ。
 命を懸けた戦いになるって分かっているのに、何故か気持ちは静かだった。

 コンコン。

 ――?

 こんな時間にドアをノック?
 誰だろう?
 ひとみが不安で眠れないって来たのかな?
 ほんの少しためらった後、ドアを開ける。

「せ、聖!?」

 そこには何故か思いつめたような顔の聖。

「なに、こんな時間に。どうかした?」

 その表情を見て、ただ事じゃないのかなとさすがに心配になった明美が、いつもよりはやさしく声をかける。

「少し……なかに入っていいか?」

「へ? なか?」

 おいおい、こんな時間にか弱き女の子の部屋へ入るのか!?
 けれど、なんだろう。こんな表情の聖を放っておけないのも確かだった。

「いいよ。入りな」

 部屋へ入れても聖は無言のまま立ち尽くしている。

「………」

 もーなんなんだ!?
 こんな時間に尋ねてくることといい、こんな無口な聖なんて、いつもベラベラ喋りまくってはゲラゲラ笑う、聖らしくない。

「あのさ、そろそろ寝ようと思ってんだけど。だからあんたも早く寝なさいよ。ってもあんまり寝る時間なんてもうないけどね」

 時計を見ながら明美がいう。

「俺」

「は?」

 ようやく口を開いた聖の小さい声に聞き返す。

「俺、さっきまでこれで救世主になれる! って浮かれてた」

「あ、ああ……まぁ念願かなって良かったよな。これでこの学校に入った甲斐もあるってもんだ」

「そうじゃない! そうじゃないんだよ!」

「うるさい!」

 いきなり大声を出す聖に殴りかかる。

「だっ!! いってー……」

 容赦なく殴られた頭を痛そうに擦る聖。

「何時だと思ってんだ。大声出すな。うるさいよ。だいたいあんたのいってること分けわかんないよ」

「命、懸けなきゃいけないんだぜ?」

「分かってるわよ」

 急に真剣な瞳で見返してくる聖に頷くと、手を掴まれた。
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