ゾンビバスター~4人の戦士たち~
 そして、今に至る。
 和己は当てになるのかならないのか、いまいち分からない。
 敵はゾンビ10体あまり。
 戦いなれているわけではないため、さすがにこれだけの人数を相手にできる自信がない。明美の背中に冷たいものが流れた。 
 目の前に迫るゾンビといつでも戦えるように、細剣を構えた。そこに後ろの和己から肩を叩かれる。

「……?」

 肩を叩かれて振り向く明美に、和己はコンビニの袋を手渡す。

「なにコレ、どういうこと!?」

 思わず受け取ってしまって、片手に細剣、片手にコンビニの袋を持たされた明美が戸惑っていると、なにを思ったのか明美をその場に突き倒した。思ってもみなかった和己の行動に、何の抵抗をする暇も無く地面の上に倒れこむ。

「いたッ……!」

 地面に手を付いて擦りむいた膝の痛さに顔をしかめ、和己を睨みつけようと顔を上げ、なにすんの! と、悪態をついてやろうと開きかけた口が、そのまま止まる。
 目の前のゾンビと、わけの分からない相棒に振り回されている明美の前で、和己は槍を手に構え僅かに重心を低くしていた。
 そして目の前のゾンビが一歩足を踏み出した途端、片足を軸にした和己が風を切った。槍の柄を掴み、それを大きく円を描くように回転させたのだ。槍はリーチが長い分、広範囲の敵に効果的だ。それを楽に振り回すにはそれなりの力も必要である。それを顔色一つ変えず、和己は振り回したのだ。槍の餌食になった前列のゾンビたちが総崩れする。それを見ていた後方のゾンビたちがたじろぐのを明美は見た。

 強い……!
 明美がその強さに見とれている側で、和己は槍を活かした攻撃を次々と繰り出し、あっという間に全てのゾンビを一掃してしまった。
 あとに残るのはゾンビたちの土に返った影も形もなくした姿……。
 もし、私が立ったまま剣を手にゾンビと戦っていたら、逆に邪魔だったかもしれない。槍を使うのに邪魔だったから、私を突き倒したんだろう。

「………」

 明美は唖然としたまま、和己を見上げた。
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