ゾンビバスター~4人の戦士たち~
 校長は目の前に並ぶ4人の心の内を見るように、一人一人をゆっくり見ていく。

『聖戦士』の儀式とは、校長室の奥、マリアさまの像を前に4人が結束するために行われる儀式のこと。『マリアさま』はそれに従う『戦士』たちに祝福を。そして『戦士』たちは『マリアさま』に永遠の忠誠を誓うための儀式。これが終わると『救世主』として外の世界でゾンビと戦う資格を得られるのだ。 
 明美もひとみも聖も、校長の威圧するような鋭い瞳から視線を外さない。
 しかし。
 光成は校長と視線を合わすと、落ち着きなく視線を彷徨わせはじめた。

「富樫光成?」

 校長が低く、名を呼ぶ。
 するとビクっと身を震わせ、

「ごめん……俺、やっぱり無理だよ。怖い。まさかひとみが『マリアさま』に選ばれるなんて思ってなかったから」

「光成!?」

「お前っ!」

「待ちなさい!」

 明美と聖が飛び掛っていきそうなのを。校長の鋭い声が制する。
 光成は顔を青くさせると、

「俺、降りるよ……ごめん、皆……!」 

 踵を返して勢いよく出て行ってしまった。

「光成ー‼」

 明美の呼ぶ声もむなしく、彼は戻らない。
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