ゾンビバスター~4人の戦士たち~
「……うん」

 今度はひとみが頷く番だった。

「あのね……教会へたどり着く前、明美ちゃんたちと離ればなれになっちゃったじゃない? その時、聖ちゃん、ゾンビを倒しながら、片方の手はずっと私の手を握ってくれてて、ずっと守ってくれてたの。私の前にあるその背中が大きく見えて、頼りがいがあって……すっごいすっごいカッコよかったのっ」

 両手を握り締めて目をきらきらさせている。きっと頭の中でその時の光景が甦っているのだろう。しかも王子さま級に美化されてるとみた。

「もしかして……聖に体を捧げたいとかいいだすんじゃないだろうね?」

「いやーん、明美ちゃんわかったぁ!?」

 明美の言葉に正解だとでも言うように、嬉しそうに小さく拍手をする。
 わかったぁ!? じゃないよ。まったく。少し呆れながら明美はため息をつく。
 小さかった恋心が、きっかけさえあれば大きくなるもの。この場合は自分を庇ってくれる聖のその姿に、大きくなったってことか。
 聖に、身の純潔を捧げる、ねぇ?

「あのさ、好きだからすぐそうなるってことは……」

「分かってる。聖ちゃんが明美ちゃんのこと凄く好きだってこともちゃんと分かってる。私だって明美ちゃんのこと、大好きだもん」

 明美の言葉を遮って話すが、途中どこか論点がずれている。

「明美ちゃんのことも好きだけど、聖ちゃんのことも好き。今すぐどうこうってわけじゃないの。今は、明美ちゃんのことが好きな聖ちゃんを見ているのも好きだから。ただね、いずれ……そうなれたらいいなって思うだけなの」

 そういうと、えへへと、照れくさそうに笑う。
 今は想うだけで幸せだと笑うひとみを見て、どこか羨ましくも感じた。

「そうだね……私たち、いつどうなるか分からない。死と隣り合わせの生活をしてるんだから、恋するぐらい、いいと思う」 

 戦い中心の生活でも、それぐらいの気持ちは持ってもいいよね?
 だって、聖のことを話すひとみはこんなにも生き生きとしている。

 恋、か。
 恋愛なんて、がらでもない私には関係ないけど。
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