ゾンビバスター~4人の戦士たち~
 確かに、最近の光成の様子は少しおかしかった。
 そう、ひとみが『マリアさま』の称号を得られるかもしれないって、ウワサされていた頃から。
 入学当初、最初に明美とひとみの二人に声をかけてきたのは以外にも聖ではなく、光成だった。
 入学してから1ヶ月の間で4人のグループを作らなくてはいけないのだが、これは先生たちの意思で決められるものではなく、生徒たちの意思が尊重される。そのため、選ばれてこの学園に入ってきたものたちと1ヶ月間様々な交流をし、気が合うもの同士が集まる。

「君たちさえ良かったら組まないか?」

 そういって笑顔で握手を求めてきたのは光成だった。
 入学当初から気が合うのか、ひとみとよく話をしているのを見かけていたため、ためらうことなくその手を取った。

「およ? なになに光成く~ん両手に花!? いいな、いいなっ俺も仲間に入ーれーて♪」

 そういって飛び入り参加したのが聖だった。
 4人の中でリーダー的存在だったのも、光成。

「俺たち最強のダッグを組めるな!」

 嬉しそうに笑っていたのに。
 ここ最近になって笑う回数が減り、なにか考え込むことが多くなった。

 ひとみのような少しぼーっとした女の子なら『マリアさま』になることなく、思う存分体を動かして楽しい学園生活のまま卒業できると、心のどこかで光成は考えていた。

 それが―――。

 自分たちがゾンビと戦うことになるかもしれないという――現実。
 死というものに直面しながら過ごす毎日を考えた時、夢物語で終わるはずだったものが、現実になっていくその見えない恐怖が、彼の足を竦ませた。
 そしてそれが、校長の真実を問うような目で見られたとき、隠されていた思いがさらけ出された。
 
「マジ、かよ……」

 終わった、とその場にしゃがみこむ聖。

「光成、なんて奴! ひとみのこと信じてなかったのかよっあのバカ!」

 光成が去ったドアにやりきれない思いを吐く明美。

「………」

 言葉もなく立ち尽くす、ひとみ。

 
 結局、『聖戦士』の儀式は受けられなかった―。
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