ゾンビバスター~4人の戦士たち~
「閃かないとでないんですよ。あの技! あはは」

 ぶちまけてすっきりしたのか、斎は清々しいと思うほどのさわやかな笑顔を浮かべて、とんでもない爆弾発言をした。

「なにー!?」

「なにー!?」

 聖と明美がハモる。

「いやぁほんと、今まで隠していてごめんなさい」

 なんて素直に謝っている。

「あ、おい和己!」

 聖の声に振り返ると、槍を肩にかけた和己が校舎に戻っていくところだった。

「和己?」

 明美の問い掛けに足を止め、振り返る。

「……付き合いきれない」

 うんざりしたようにそれだけいうと、きびすを返して校舎内に戻って行った。
 私だって帰りたいんだけど。
 同じ気持ちであろう聖と顔を見合わせ、

「さっさと片付けますか」

 苦笑いを浮かべる聖に渋々頷き、ため息をつきつつも、取りあえず頭を戦闘モードに切り替え細剣を構えた。
 それにしても和己、そうとう斎のことが嫌いなんだな。

「斎神父! 邪魔。下がってないとあんたも切るよ!」

 いつまでもゾンビと追い駆けっこを楽しんでいる(?)斎に鋭く叫ぶ。

「うわわっそれは勘弁してください」

 気弱そうな笑みを浮かべながら、アタフタと逃げ帰ってくる。
 戦い慣れした明美と聖にとって5体のゾンビなど問題ではなく、斎があれだけの時間をかけて遊んだ(?)ゾンビたちはあっという間に倒された。

「いやぁ~助かりました」

 のほほんと笑う斎に明美が剣先を向ける。

「あんた使えないじゃん!」

「そんなこといわないで下さいよ。今日はたまたま閃かなかっただけで……」

 明美の厳しい声に、さすがに後ろめたさを感じたのか、俯き身を小さくして、申し訳なさそうに上目使いに見る。

「マジでそんな気まぐれなの困るよ。こっちだって命懸けでやってんだ。今のはたまたま数が少なかったから良かったけど、いつかみたいに大量のゾンビに襲われたら、俺らを援護してもらえないってことだろ?」

 そういう聖もさすがに真剣な表情だ。

「あー…」

 突っ込まれてうまく言葉が見つからないのか、斎が黙り込む。

「頼りになる仲間だって信じてんだから、頼むぜ」

 最後はいつもの聖らしく茶目っ気たっぷりな笑顔を浮かべ、そのまま明美に行こう、と声をかけて剣を鞘に戻すと校舎へ向かった。

「あのっ、期待に応えられるように頑張りますよ!」

 二人並んだ明美たちの背中に、元気な斎の声がかかった。
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