ゾンビバスター~4人の戦士たち~
「頑張るっても閃かなくちゃ使えないんだから、あんま期待できそうだけど……それにしてもさっきは珍しく熱い聖ちゃんだったね?」

 二人で廊下を歩きながら、らしくないじゃん? と明美が茶化すように肩をどつく。

「カッコ悪いけど……」

「ん?」

 足を止める聖に、少し先を歩いた明美が気付いて振り返る。

「全力出しても体力に限界があるから。いざとなったら俺の力だけじゃ、お前を守ってやれないから」

 胸が高鳴る。
 真剣で真っすぐな強い視線。
 まるで射抜かれたように動けなかった。
 今までで一番、聖を意識した瞬間だった。

「明美ちゃん……?」

 夜。
 ひとみが寝ているとなりに、いつものように静かに布団を敷いていたとき、彼女が目を覚ました。か細いけれど、久しぶりのひとみの声に、嬉しくて明美は布団を敷く手を途中で止め、ひとみに駆け寄る。

「明美ちゃん、今……?」

「いま夜だよ。私もそろそろ寝ようかと思ってたとこ。調子はどう?」

 となりの部屋の男子達には聞こえないように、小声で話し掛ける。

「少し目が回る、かな……」

 起きずに寝たまま話し掛けてくるぐらいだ。やはりまだ辛いのだろう。

「明美ちゃん……」

「ん? なに」

「皆、元気……?」

「うん、元気だよ。聖も相変わらず、1年中お祭り状態」

 安心させるようにいう。
 寝てばかりいるひとみは食事を取らない分、やせた。ちょっと前までほんのりピンクだった頬も、色を失い、血の気のない白さになってしまった。

「斎さんは……?」

「斎神父? 生きてるよ。あいつよくわかんないんだよね。閃かなくちゃ技が使えないとかいって、ゾンビに追い掛けられたりしてさ。大人のくせに情けない奴だよ」

「そう……」

「まぁひとみのこと心配してくれるし、いい奴なんだろうけど」

 最初に斎を見たときは、見知らぬ男の登場に驚いていたひとみも、診察をしてもらったりして、今ではすっかり打ち解けているようだった。

「………」

「それよりもひとみ、あんたに早く元気になってほしいよ。和己や、聖だってそう思ってる」

「うん……私、頑張る」

 布団の中で小さく、だがしっかりと頷いた。
< 72 / 126 >

この作品をシェア

pagetop