ゾンビバスター~4人の戦士たち~
「気まぐれなその力、信頼できるようにしてよね」

「は、はい。努力します」

 言い方はキツいものの、明美らしい態度に、少しは頼りにしてもらえていると感じた斎が、微笑みながら頷いた。

「明美!? そのカッコどうしたん?」

 家庭科室に戻ると、明美の土ぼこりに汚れた姿を見て聖がぎょっとした。その声に、和己も振り向く。

「……どこまで神父を呼びに行ったんだ」

「予想外なことにゾンビが現れてこの有様。でも斎神父のおかげで片付いたから大丈夫」

「俺の明美が! なんてことだ……!」

 俺の知らない間に危険にさらされていたなんて! と大袈裟な様子で頭を抱える聖を見て、冷めた視線を送りながら、

「あんたのじゃないから」

 ぴしゃりと言い放った。

「昼食、さきに食べてて」

 シャワー浴びるといいのこし、背を向ける明美に、斎を褒める聖の声が届いた。

「ひとみ?」

 着替えを取りに部屋に戻るとひとみが目を覚ましていた。髪もボサボサ、服や肌を土まみれにした明美を見て目を丸くする。

「明美ちゃん、そのカッコどうしたの?」

「ゾンビと一戦したらこうなっちゃったよ」

 寝ているひとみを不安がらせないように、笑いながら肩をすくめて見せる。

「悔しいんだけど、助けるはずの斎神父に、逆に助けられたんだよね」

「………」

 着替えを探し洗面用具を揃えると、急に静かになってしまったひとみを振り返る。するとどこか青ざめたような表情をしていた。

「ひとみ? あんたこそ大丈夫なの? 顔色悪いよ」

「ううん、大丈夫。それより、後でいいから斎さんと話したいわ」

 また、斎。

「わかった。とりあえずシャワー行ってくるから」

 無理に笑いながら足早に部屋を出た。
 ひとみは私といるよりも、斎が側にいる方が嬉しいんだろうか?
 聖よりも、斎を好きになってしまったんだろうか?
 そんな不安が一瞬だけ頭をよぎった。
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