ゾンビバスター~4人の戦士たち~
 脱衣所で靴下を脱ぐと、足首にちょうど人の手に握られたような跡がくっきり残っていた。さっきのバトルで、ゾンビに宙吊りにされた時に出来たものだ。しばらく消えない痣になるだろう。まだ歩く時に痛まないだけマシだと思わなければ。
 温かいシャワーで体についた土を洗い落とし、素早く着替え家庭科室前の階段から一階の保健室に向かう。
 大きな窓から見える空は、いつの間にかグレーの重たい雲に覆われている。雨でも降るのだろうか。自分達の暮らしている家庭科室のようにヒーターの入っていない保健室の中は、シンと冷たい空気に包まれていた。いくつかある棚の中から湿布を探し出して、安定した場所を探し、湿布を貼るためにベッドへ近付いていく。

「?」

 開けっ放しのドアの辺りから人の気配。

「和己?」

 警戒しながら振り向くと、見慣れた仲間の姿だった。入口でドアに持たれながら腕を組んでこちらを見ている。

「……怪我したのか?」

 明美が手に持っている湿布を見て、眉をひそめた。

「たいした怪我じゃないんだけどさ、念のため」

「怪我したなんて聞いてない」

 明美がベットに腰掛け、側にあった椅子を引き寄せる。

「本当にたいしたことないんだってば」

 いいながら椅子の上に足を乗せた。靴下を脱いだそこに現れたまだ赤い痣を見た和己が、眉間を寄せながら近づいてくる。目の前まで来ると床に片膝を着いて、痣に触れないように明美の踵をそっと持ち上げた。

「やってやる」

「や、いいよ。ってかパンツ見えるから離せっ」

 手を差し出す和己の手を叩きながら、彼に触られている足をほどこうともがく。

「暴れたら余計見えるんじゃないか?」

「っ……!」

「見る気もないけどな」

 スカートの中身など気にならないかのように、ため息を着く。

「………」

 相変わらず手を差し出したまま、じっと見つめてくる和己に根負けして明美は、しぶしぶ湿布を手渡した。
 そっと押し当てるように湿布が貼られると、すぐにひんやりとした感覚が伝わってきた。大きな手が器用に包帯を巻いていく。

「多少動いてもこれなら取れない」

「あ、ありがとう」

 処置を施してくれた和己に対し、素直に礼を述べた。
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