イジワル上司と秘密恋愛


長い長い、不毛な夜。

意地を張り続ける私と、それを許さない綾部さんの、追いかけっこのような夜。


「俺のこと好きなくせに。どうして逃げ出そうとするんだよ」

ベッドで私を抱きながら、綾部さんはいつもより余裕のない口調で責めた。

——好きだから逃げるんです。好きになればなるほど辛いから、逃げるんです。

本命になれない女の情けなくて醜い心なんて、きっと口に出したところで彼は苦笑するだけ。『ワガママ言うなよ、最初から分かってて抱かれたくせに』って。

だから、唇をキュッと噛んで口を噤んだ私に、綾部さんは

「……意地っ張り」

と、目を眇めてから乱暴な愛撫を綴った。


——この人から逃げたい、逃げたい、とばかり考えていたから。

哀れな私に神様は気まぐれな手を差し伸べて
掴んだ後にそれは、私の望む答えじゃなかったと、愚かにも気が付く。

 
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