イジワル上司と秘密恋愛
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「……本当は改めて、もっときちんと話したかったんだけどさ」
AM5時。始発で1度家に帰るため起きた綾部さんが、ワイシャツのボタンを閉めながら言う。
私はまだ眠りから覚めきってないボンヤリした頭で、ベッドの中からそれを聞いた。
「俺、来月急遽異動になるかもしれないんだよ」
「……え?」
ボンヤリした頭では上手く理解できなくて聞き返した私に、今度は視線を向けなおして綾部さんは繰り返す。
「昨日、終業後に部長に呼ばれてさ。西日本事業所で新しく起ち上げる事業部がちょっと難航してるから、行って戦力になって欲しいって。とりあえず部長代理、事業部が軌道に乗ったらそのままそこで部長として残っていいって言われた」
彼の言葉が浸透していくにつれ、頭がショックで覚醒していく。
あまりに突然の話で、声が出てこない。
「もちろん受けるつもりだけどさ、志乃のことどうしようかと思って。だから、これからのこと話し合うつもりで昨夜は来たんだけどな」
「そんな……」
うっとおしく顔にかかってくる髪を手でかき上げながら、私は何も着ていない身体を起こした。